不動産鑑定士に依頼すべきケースと費用相場

不動産業界には、さまざまな国家資格があります。「不動産鑑定士」もそのひとつです。

不動産鑑定士は、どのような場面で依頼するのでしょうか。また、必ず鑑定する必要はないため、依頼しなくてもよい場面も知っておきたいところです。

ここでは、不動産鑑定士に依頼するメリット・デメリットや相場について解説します。これから不動産取引をする方は、どのような時に活用すべきなのかを理解していきましょう

そもそも「不動産鑑定士」とは

不動産の鑑定をしている
不動産鑑定士は、不動産評価額を適正に算出してくれる専門家です。また、要望に応じて不動産活用方法や税務対策の相談もできます。なぜ、鑑定を依頼するのでしょうか?どのような流れで行われるのでしょうか?ここでは、不動産鑑定の特徴について解説します。

参考:公益社団法人 日本不動産鑑定士協会連合会『不動産鑑定士とは〜まんが・不動産鑑定士物語〜

不動産鑑定の流れ

(1) 依頼受付
電話やメールで相談内容や日程を調整します。

(2) 見積依頼
鑑定対象となる不動産情報を提示して、依頼目的や不動産鑑定評価書の希望納期日を伝えます。これらの条件を踏まえた見積書を作成してもらいます。

(3) 正式依頼
見積金額に納得できたら正式依頼をします。正式依頼には、鑑定評価依頼書への記入が必要です。不動産鑑定評価書の提出先や利害関係の有無などを依頼書に記載します。

(4) 資料準備
物件資料(建築図面・固定資産税証明など)を準備します。

(5) 現地調査
敷地内部に入り、建物の状態を確認します。敷地内部に入るため、場合によっては、依頼者の同行が必要です。また、調査は現地調査だけではなく公的機関や地域動向の調査などがあります。これらの調査を実施した上で、不動産鑑定評価を行います。

(6) 不動産鑑定評価書の納品
現地調査後に、鑑定評価額の試算が行われます。調査結果報告書と併せて、不動産鑑定評価書が納品されます。

不動産鑑定のメリット

不動産鑑定評価書には、現地調査や公的機関、地域動向などの調査結果から資産した不動産評価額が記載されています。第三者の立場である不動産鑑定士に適正な評価額を試算してもらうことで、公平な財産分与や遺産相続が行えるようになります。不動産価格は定価が存在しないため、不動産鑑定評価額は不動産取引を透明化する役割を持っているのです。

不動産鑑定のデメリット

不動産鑑定評価額を試算してもらうと、不動産取引を透明化させることができます。しかし、鑑定をするためには、現地調査だけではなく、市場分析や関係法令調査も必要です。そのため、鑑定評価額が納品されるまで時間を要します。また、20万円~80万円程度の費用がかかるので、お金を用意しなければいけません。

不動産鑑定士に依頼すべきケース

不動産鑑定評価書活用例
参考:公益社団法人 日本不動産鑑定士協会連合会『不動産鑑定評価書 活用例』より

不動産鑑定のメリット・デメリットについて解説しましたが、どのような場合に依頼すべきなのでしょうか?ここでは、鑑定を依頼すべきケースをご紹介します。

個人の場合

個人の方が依頼すべきケースは、財産分与や遺産相続をする場合です。不動産鑑定評価額を活用して公平に分けなければ、トラブルに発展してしまいます。親族間の揉め事を避けることができるのです。

法人の場合

法人はビジネスで融資を受ける機会が多いです。融資を受ける場合は、不動産を担保に設定することがありますが、不動産鑑定評価額を用意しておけば、金融機関を説得することができます。また、個人と同様で役員同士で不動産売買取引する場合や、事業譲渡する場合にも参考になります。

補足:不動産売却は「不動産査定」で十分

所有物件を売却したい場合は、不動産会社が無料で提供する不動産査定で十分です。買主側が物件の詳細情報を知りたいと思った場合は、ホームインスペクションを活用して調査するはずです。また、一般的な不動産売却は、市場価格と売主側の希望販売価格で販売価格が決められます。そのため、法的効力はありません。このような法的効力がない取引の場合は、不動産査定だけで十分といえます。

⇒ 揉める不動産相続のトラブル解決事例、ありがちなパターンとは?

不動産鑑定士の依頼費用について

不動産鑑定事務所や対象物件によって、依頼費用は異なりますが、一般的な費用相場は以下の通りです。下記の表は、調査対象物件が遠方にあるため出張費がかかる場合や、権利関係が複雑である場合を加味した費用相場です。

土地 20万円~40万円
建物 20万円~40万円
土地+建物 25万円~65万円
マンション 30万円~85万円
賃貸物件 35万円~85万円

報酬基準で考えた場合は、不動産鑑定評価額の約1%が不動産鑑定士の報酬になることが多いです。

不動産鑑定士の選び方

信頼できる不動産鑑定士
実際に依頼したいとなった時に、数ある鑑定事務所の中からどのように依頼先を選べば良いのでしょうか。ここでは、依頼先の選び方について解説します。

複数の業者に見積依頼する

不動産鑑定士を選ぶ際は、最初から1社に絞り込まずに複数の業者を比較・検討してみましょう。各専門家によって、提案内容や料金は異なります。また、信頼できる人柄であるかどうかの見極めも大切です。そのため、複数社にお問い合わせをして良く比較してみましょう。

実績が豊富な不動産鑑定士を選ぶ

不動産鑑定評価額は、不動産取引を透明化するためのものです。そのため、不動産取引関係者や弁護士、家庭裁判所など、誰が見ても納得がいく鑑定書を作成する必要があります。そのため、鑑定実績を豊富に持っているかを確認しましょう。

また、実績を確認する際に対象物件のエリアの実績を豊富に持っている鑑定士であれば、市場価値を的確に捉えているため、精度の高い不動産鑑定評価額を試算してもらえるはずです。

魅力的な提案力で選ぶ

不動産を巡る問題は多様化しており、不動産売買のための鑑定評価額だけが鑑定目的ではなくなりました。鑑定目的には、主に以下のようなものがあります。

[目的]

  • 企業の決算対策のための鑑定評価
  • 節税目的の鑑定評価
  • 投資目的の鑑定評価
  • 証券化目的の鑑定評価
  • ファイナンスのための鑑定評価
  • 倒産物件の財産評定目的の鑑定評価

そのため、不動産鑑定を行う目的を説明した上で、より魅力的な提案をしてくれた不動産鑑定事務所を選んでみてください。

時間と費用をかけて依頼する必要があるか見極める

実家の財産分与を相談する夫婦
不動産鑑定評価額を試算しておくと、不動産取引の透明化が図れます。不動産を担保にして融資を受ける場合も、審査が通りやすくなるなどのメリットがあるのです。

しかし、法的効力が必要ない不動産売却を行う場合は、不動産査定で問題ないです。不動産鑑定には時間と費用がかかるため、時間と費用を使用して不動産鑑定する必要があるかどうかを良く見極めて活用してください。

不動産取引において、知っていて損になることは何ひとつありません。知識があれば損失やトラブルを回避することができます。ビジネスを成功させたり、相続を円滑に終わらせるために、セミナーを活用し情報収集をしていきましょう。

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