不動産投資で最も大きなリスクは、火災や地震などの自然災害によって建物が壊れるなど、不動産がダメージを受けることです。壊れたところを修繕したり、新しく建て直したりしなければ、家賃を支払ってくれる入居者を迎えられなくなってしまいます。収益性が悪化してしまうため、火災や自然災害は不動産投資の大敵です。
とはいえ、日本ではいつどこで火災や地震などの自然災害に遭うか分かりません。
所有している不動産が損壊したら、罹災証明書を発行して保険金の請求などを行いましょう。保険金を使って不動産を建て直したり修繕したりすれば、損失は軽減できます。
この記事では、罹災証明書とは何か、どうやって申請するのかなどを解説していきます。税金の減免や損害保険の保険金請求に使えるので、覚えておきましょう。
目次
罹災証明書とは何か?
罹災証明書(りさいしょうめいしょ)とは、火災や自然災害によって建物が損壊する被害を受けたときに発行される書類です。発行には手続きが必要となるので、手順については後述します。
まずは罹災証明書がどんなものなのか知るため、基礎知識を解説していきます。対象となる災害や、何を証明する書類なのかを学んでいきましょう。
罹災証明書の対象となる災害
罹災証明書の対象となる災害は、基本的には以下のとおりです。自治体によって異なる可能性がありますが、一般的には、以下の災害対策基本法第2条第1項に定める災害が対象となります。
暴風
竜巻
豪雨
豪雪
洪水
崖崩れ
土石流
高潮
地震
津波
噴火
地滑り
その他の異常な自然現象
大規模な火事
爆発
などが対象となります。地震や津波、洪水といった近年大きな被害をもたらした災害も、罹災証明書の対象となります。
被害の大きさを証明してくれる
罹災証明書は、被害の大きさを公的に証明してくれる書類です。被害の程度は以下の表のとおり5段階に分けられます。
損害基準判定 | 損壊の程度 | 損壊の例 |
---|---|---|
全壊 | 50%以上 |
全部が倒壊している 補修では元に戻せない |
大規模半壊 | 40%〜50%未満 | 大規模な補修が必要 |
半壊 | 20%〜40%未満 | 大きな被害ではあるが、補修すれば居住できる |
準半壊 | 10%〜20%未満 | 半壊には至らないが、応急処置が必要 |
準半壊に至らない (一部損壊) |
10%未満 | 応急処置の必要がない |
損害判定基準は、損害を受けた部分の被害をお金に換算し、住宅の固定資産評価を参考に、全体の何%の被害が出ているかを計算します。原則としてこの方法で計算された割合を、上記の表に当てはめて被害の程度を決めることになります。
ちなみに被害の程度は令和2年(2020年)に改定され、5段階での評価となりました。準半壊が追加され、一部損壊の定義が引き下げられるなどの改定があり、以前の情報を掲載しているサイトとは整合しなくなっています。気をつけてご覧いただければと思います。
被害の程度を判定するのは調査員
罹災証明書に記載される被害の程度を判定するのは、自治体の調査員です。不動産のオーナーや、罹災証明書の発行を申し込んだ人ではありません。
そのため、被害を受けた部分は調査員が来てくれるまでそのまま残しておいた方が良い、と考えられます。自分で補修してしまうと、自然災害で壊れたと認められないことがあり得るからです。
参考:内閣府防災情報『罹災証明書』
罹災証明書は何の役に立つ?
所有している不動産が火災や自然災害で被害を受けたら、必ず罹災証明書を発行してもらいましょう。以下の3つのメリットがあり、災害による損失を少しでも埋めることができるからです。
- 税金や保険料が減免される
- 保険金の申請ができる
- 支援金を受け取れる
税金や保険料が減免される
被害の程度によっては、税金や保険料の減免を受けることができます。一般的には、全壊〜半壊までの被害の方を対象に、税金や保険料の減免を行なっている自治体が多いです。
対象となるのは、例えば以下のような種類の税金や保険料です。
✅ 住民税
✅ 固定資産税
✅ 国民健康保険料
✅ 後期高齢者医療保険料
✅ 介護保険料
✅ 国民年金保険料
ただし、対象となる税金の種類や、どれくらいの被害を受けた人が対象なのかは、自治体によって異なります。
詳しくは各自治体にお問い合わせください。
保険金の申請ができる
不動産投資を始めるのと同時に、火災保険や地震保険に加入していると思います。損害保険会社に連絡し、調査の依頼や保険金の申請を行いましょう。
保険金の支払いまでに、保険会社から罹災証明書の提示を求められることが多いです。詳しい手順は会社によって異なりますが、罹災証明書はどこかのタイミングで必要となります。保険金をもらうためにも、罹災証明書は発行してもらいましょう。
なお、保険会社の現地調査が終わるまでは、被害を受けたところは自分で補修しないようにしましょう。調査員が被害の程度を正しく把握できず、保険金の金額が不当に低くなってしまう可能性があるからです。
支援金を受け取れる
半壊以上の場合、国や自治体の支援金を受け取れる可能性があります。該当する人は申請を行い、住宅の建て直しや修繕に支援金を充てましょう。
半壊以上の場合、災害救助法の応急修理制度が使えます。大規模半壊以上なら、さらに被災者生活再建支援法の支援金も使うことができます。
詳しくは自治体によって異なる可能性があるので、詳しくは自治体に確認しましょう。
罹災証明書の発行手順
罹災証明書を発行してもらうためには、自分で窓口に申請する必要があります。以下の3つのステップで発行してもらえるので、詳しく見ていきましょう。
- 窓口で申請する
- 現地調査に来てもらう
- 罹災証明書が発行される
窓口で申請する
火災の場合は消防署に、自然災害の場合は市町村に対して申請します。申請は被災者本人が行いましょう。委任状があれば、代理人でも申請することが可能です。
申請時には、本人確認書類や印鑑、被害に遭った住居の写真が必要になります。なお、自治体によって必要書類が異なる可能性もあるので、ご確認の上、窓口に行くのがおすすめです。
また、申請期限は自治体によって異なるので、調べた上で期限内に行いましょう。ただし、地震や台風などの大きな災害など、期限内に申請することが難しいとされる場合は、期限の延長など緩和措置を設けている自治体もあります。ケースバイケースなので、申請するときは自治体に確認してください。
現地調査に来てもらう
申請すると、自治体の調査員が被害状況の調査に来てくれます。上述した基準などに基づき、被害の程度を把握してもらいます。
罹災証明書が発行される
現地調査の結果を受けて自治体が被害の程度を認定したら、罹災証明書が発行されます。これで発行手続きは終了なので、税金や保険料の減免申請や、保険金の請求などを行いましょう。
ちなみに罹災証明書の内容に不服がある場合は、再調査を依頼することができます。
まとめ
罹災証明書の対象となる災害や、発行手順などを解説してきました。
日本で不動産投資をする以上、火災や自然災害と無縁でいることはできません。
火災リスクを下げるために木造アパートではなく鉄筋コンクリートのマンションを選んだり、洪水に遭わないようにするために川沿いを避けたりする工夫をするべきでしょう。
不動産投資で成功するためには、災害に強い物件を選ぶ知識が必要です。不動産投資セミナーや書籍などで勉強し、知識を身につけましょう。