短期間で事業を拡大させようと、1法人1物件スキームで複数の投資物件の購入を検討する投資家がいます。しかし、個人与信枠を超えた融資は返済能力が危ぶまれます。
そのため、1法人1物件スキームが発覚した融資申込者に対しては借入金額の一括返済や大幅の金利の引き上げが金融機関によって行われており、近頃は大きな問題として取り上げられるようになりました。
これからは、金融機関の合併などの影響もあり、このような手法で投資物件は購入できなくなるので注意しなければいけません。
そもそも、1法人1物件スキームとは、どのような手法なのでしょうか?どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?ここでは、1法人1物件スキームについて分かりやすく解説します。
目次
1法人1物件スキームとは
1法人1物件スキームとは、投資物件を購入するにあたり新設法人を作って、別々の金融機関から融資を受ける方法です。「複数法人スキーム」や「多法人スキーム」と呼ばれることもあります。
投資家本人は連帯保証人として設定されますが、個人信用情報には融資に関する情報が記載されません。そのため、新設法人ごとに融資が受けられるのです。
3つの法人設立すれば1億円×3法人で3億円の融資が受けられます。そのため、不動産投資事業を短期間で拡大する方法として注目を集めました。しかし、個人与信枠を超えた借入になるため、この手法がバレた場合は、金融機関側から借入金額の一括返済や金利上昇などのリスクが発生するので注意しなければいけません。
業者の勧誘を受けて手を出した人が多い
1法人1物件スキームで不動産投資を始める手法が広まった理由は、2015年頃から不動産投資セミナー内で推奨されていたからです。高属性で不動産投資に関する知識が少ない投資家が、業者の勧誘を受けて手を出すケースが多かったようです。
投資家の中には、自分の与信枠を超えた借入金が金融機関側にバレたら、どうなるかなど心配する人もいましたが、業者側が明確な回答をしてくれなかったと回答する投資家もいます。
金融庁の審査前に問題解決したい金融機関が続出
1法人1物件スキームで不動産投資事業を拡大したもの、事業が上手くいかずに悩んでいる投資家が増加しています。
このような不良債権を放置したまま対応しない場合は、金融庁から何らかの処分を受けることになるので、このような指摘が入る前に金融機関側で対処しようとする動きが出ています。そのため、「なぜ、今頃、借入金額の全額返済を求めてくるの?」と戸惑う投資家も増えてきているのです。
1法人1物件スキームのメリット
1法人1物件スキームを活用する投資家がいますが、どのようなメリットがあるのかを確認していきましょう。
個人の与信枠を超えた融資が受けられる
投資物件を購入する際に新設法人を作って融資を受ければ、投資家本人は連帯保証人として設定されますが、個人信用情報には融資に関する情報は記載されません。そのため、投資物件ごとに新設法人を作って別の金融機関で融資を受ければ、既存法人の借入額が金融機関側に知られることはありません。その結果、個人の与信枠を超えた融資が受けられるのです。
例えば、10個の新設法人を作れば、1億円×10法人分で10億円の融資を受けることができます。この金額は個人の与信枠では絶対に借りられませんが、1法人1物件スキームを活用すれば、多額の融資が受けられるのです。
短期間で事業拡大を目指せる
不動産投資事業用の法人を設立して経営していく場合、1つの法人で複数の物件を購入するためには、複数年経過していなければいけません。
銀行は決算書の内容を見て融資の可否を決めていくことになりますが、1棟目の投資物件の経営状況は3年程度経過しなければ分かりません。経営状況が分からない法人に融資をしてくれるほど、金融機関の融資審査は甘いものではありません。
しかし、1法人1物件スキームであれば、1年以内に複数物件を購入することができるため、短期間で事業拡大を目指していくことができます。
消費税還付が受けられる
中古マンションなどの建物は課税対象のため、消費税還付が受けられます。例えば、3,000万円の中古マンションを購入した場合は、消費税10%に相当する300万円分の消費税還付が受けられます。
しかし、1法人1物件スキームが問題視されるようになり、国税庁では2020年の税制解放で消費税還付を廃止する方針を定めました。2020年10月1日以降から、消費税還付は受けられなくなるため、メリット自体は少なくなります。
1法人1物件スキームのデメリット
1法人1物件スキームのメリットについて解説しましたが、デメリットもあるので注意しなければいけません。次に、デメリットについて解説します。
金融機関にバレたら一括返済が求められる
1法人1物件スキームは、個人与信枠を超えた借入となります。金融機関側は、個人与信枠を超えた融資は基本的に行いません。
また、融資を受ける場合、他の金融機関からの借入があるかどうか尋ねられますが、黙秘をして借り入れることになります。そのため、請求喪失に該当してしまうのです。経営上の重大な変化の報告義務違反や財務状況を示す書類に虚偽内容がある等の事由が発覚した場合、一括返済しなければいけないと定められているので注意が必要です。
銀行の合併が進んでおり情報共有される
昔は、各銀行の情報は各自で保管されていました。しかし、近頃は金融機関の合併が進んでいるため、融資を受けている金融機関同士が合併することで1法人1物件スキームがバレてしまう可能性が高くなってきています。
金融機関の中でも、信用金庫と信用組合の統合・合併は増えてきており、各金融機関の数は減少していきています。平成8年度の信用金庫の数は410、信用組合の数は364だったのに対して、平成28年度の信用金庫の数は264、信用組合の数は151と大きく減少しているのです。そのため、1物件1法人スキームが従来よりもバレやすくなってきています。
補足:一括返済を求められて経営破綻する人もいる
1法人1物件スキームで融資を受けていたことがバレると金融機関から、借入金の一括返済が求められます。一括返済ができない場合は、大幅に金利が上げられることもあります。しかし、融資の金利が1%でも上がれば、不動産投資収支計画書の採算が合わなくなってしまい、経営破綻に陥ってしまう人も多いです。
短期間で事業拡大を目指せるが、手を出すのは控えよう
1法人1物件スキームで投資物件を購入すれば、個人与信枠を超えた借入が可能となります。たくさんの法人を設立して、各法人ごとに融資を受ければ、10億円の資金調達も可能となるのです。そのため、短期間で不動産投資事業を拡大させていくことができます。
しかし、基本的に金融機関では、個人与信枠を超えた融資は行っていません。融資審査の際に、他銀行からの借入がないと回答して融資を受けると、虚偽の報告をしたとして、借入金額の一括返済が請求されたい、ペナルティとして金利が上げられてしまいます。
その結果、不動産事業が計画通りに回らなくなり、自己破綻する投資家も少なくありません。
そのため、とても魅力的な方法ですが、手を出すのは控えるようにしましょう。
また、不動産投資に関する知識がなければ、予想外のトラブルに巻き込まれてしまいかねません。不動産投資セミナーに参加をして知識を深めるように心がけましょう。
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