「節税のために経費計上したいけれど、どこまでを経費扱いできるのだろう…?」「不動産所得金額を下げるために雑費として経費計上しても大丈夫だろうか…?」と悩む方は多いです。
不動産所得は「総収入金額 ― 必要経費」で計算されるため、経費で処理すれば所得金額を下げられて高い節税効果が見込めます。そのため、不動産投資を始める方は、科目についておさらいをして、どのような項目を経費計上できるか把握しておきましょう。
ここでは、不動産所得の節税効果のために知っておきたい経費科目と青色申告控除について解説します。この記事を読めば、節税対策が分かるようになるでしょう。
目次
不動産所得の節税のため覚えたい9つの経費科目
不動産所得の必要経費として計上できるものは、不動産収入を得るために必要な費用のことをいいます。
経費科目 | 内容 | |
1 | 租税公課 | 固定資産税、事業税、印紙税などの税金 |
2 | 修繕費 | 建物、備品などの修理費 |
3 | 減価償却費 | 建物などの固定資産を費用化した経費 |
4 | 保険料 | 火災保険料、損害保険料 |
5 | 借入金利子 | 賃貸物件にかかる借入金の利息 |
6 | 管理費 | 不動産業者に支払う不動産管理料 |
7 | 広告宣伝費 | 入居者募集のための広告費用 |
8 | 青色事業専従者給与 | 生計を一緒にする親族に支払う給料 |
9 | その他の経費 | 消耗品費、水道光熱費、通信費、交際費など |
不動産所得の経費(1):租税公課
租税公課とは税金のことをいいます。税金でも必要経費になるものとならないものがあります。
必要経費になるもの | 不動産業務を行う上で納める税金
(例)固定資産税・不動産取得税・登録免許税・事業所税・自動車税・印紙税など |
必要経費にならないもの | 不動産業務に関係なく納める税金
(例)所得税・住民税など |
正しく期限までに税金を納めていれば支払う必要性のなかった税金
(例)延滞税・加算税など |
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不動産業務と関係なく納める税金
(例)自宅の固定資産税など |
不動産所得の経費(2):修繕費
賃貸している建物や備品などの固定資産の維持管理のための修理費用、または損傷した固定資産の原状回復のための費用をいいます。
固定資産の価値を高め、耐久性を増すことにより使用可能な期間を長くするための支出は、修繕費に該当しません。これらの費用は、資本的支出として資産に計上しなければいけません。そして、減価償却により税法で定められた年数に配分して費用化していくことになります。
修繕費 |
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減価償却費 |
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不動産所得の経費(3):減価償却費
建物や事業用車両は時の経過や使用によって、その価値が減少していきます。建物は取得するために支払った金額を経費とせずに、税法で定められた使用可能な期間で分割して必要経費としなければいけません。定額法で計算する場合は「取得価額×償却率」で計算します。
減価償却資産の種類 | 年数 |
木造建物(住宅用) | 22年 |
コンクリート造建物(住宅用) | 47年 |
事業用車両(普通自動車) | 6年 |
事業用車両(軽自動車) | 4年 |
不動産所得の経費(4):保険料
賃貸している建物等の火災保険料などで、自宅部分の保険料は除かれます。
不動産所得の経費(5):借入金利子
賃貸物件の購入や修繕などのための借入金の利息です。自宅の住宅ローンの利息などは含まれません。不動産業務開始前の利息については、資産の取得価額に含まるということに注意をしましょう。
不動産所得の経費(6):管理費
不動産業者に賃貸の管理を委託することにより支払う手数料です。不動産業者が入居者の募集や契約、家賃滞納金の回収等を行い、手数料を差し引いた金額が手元に入ってくるという仕組みです。管理費は、一般的には家賃収入の5%程度となります。
不動産所得の経費(7):広告宣伝費
入居者を募集するために雑誌やインターネットなどに、広告を掲載するための費用をいいます。
不動産所得の経費(8):青色事業専従者給与
生計を一緒にしている配偶者や親族に支払う給料は、原則として必要経費になりません。所得税は累進課税のため、家族内で所得を分散すれば税率が低く抑えられますが、稼ぎの出所が同じですので、本来事業者一人の所得として計算すべきものだからです。しかし、青色申告の対象事業に専ら従事している者に対して支払う給与は経費扱いとなります。
不動産所得の経費(9):その他の経費
上記のほか、不動産業務を行う上で必要な費用は、経費扱いとなります。
消耗品費 | 文房具などの事務用品、共有部分の電球代など |
水道光熱費 | 共有部分の電気代、水道代、ガス代など |
通信費 | 切手代、郵送料、電話代など |
交際費 | 業者接待費、お中元やお歳暮など |
不動産所得の経費以外での節税のコツ
不動産所得の確定申告には、青色申告と白色申告があります。白色申告は普通の申告です。その一方で、青色申告は帳簿付けをして、その帳簿に基づいて正しい申告をする人に対して、税務上優遇処置を行うというものです。
青色申告をするためには、3月15日までに申請をして、税務署長の承認を受けなければいけません。しかし、青色申告で申請すると税務上のメリットが受けられ節税効果が見込めるのです。ここでは、どのようなメリットがあるのか分かりやすく解説します。
青色申告特別控除
青色申告者については、次の金額を所得金額から控除することができます。
青色申告者の種類 | 控除額 |
複式簿記により帳簿を付けており、確定申告の期日内に貸借対照表・損益計算書を添付して、この控除額を記載して申告した場合 | 65万円 |
上記に該当しない青色申告者 | 10万円 |
青色事業専従者給与
一定の要件を満たす事業の従事者に給与を支払う場合は、必要経費とすることができます。青色事業専従者給与を必要経費に計上するためには「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しなければいけません。
【該当条件】
- 青色申告者と生計を一緒にする配偶者や親族であること
- その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
- その年を通じて6か月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること
純損失の繰越控除
不動産所得の計算上生じた損失の金額のうち、損益通算しても控除しきない部分の金額(純損失)がある場合、青色申告者であれば、その純損失の金額を翌年以降3年間繰り越して控除することができます。
その他
30万円未満の少額減価償却資産の取得時必要経費算入、各種特別償却、引当金の計上、家事関連費の必要経費算入などのメリットもあります。
まとめ
ここでは、不動産所得の節税効果で押さえておきたい経費項目について解説しました。不動産投資を始めるにあたり、どのような費用が経費扱いとなるのか学習しておきましょう。
また、不動産所得を青色申告で提出すると白色申告と比較して、高い節税効果が見込めます。サラリーマンの給与所得は会社側が年末調整として手続きを進めてくれるため、不動産所得に関して確定申告をしない方や忘れてしまう方も稀にいます。また、確定申告の方法が分からないという方もいるでしょう。
しかし、青色申告をすると税務上の優遇処置を受けられるため、税理士に相談をして確定申告を行うようにしてみてください。近頃は、不動産所得の確定申告方法のセミナーなども開催されているため、このようなセミナーに参加することをおすすめします。