人生100年時代と言っても、働いて稼ぐのは60歳まで。定年退職したら、悠々自適な生活をしたいなあ、と思っている方がほとんどでしょう。
しかし、生涯所得と生涯支出を比べたとき、生涯支出の方が多くなってしまう人が大勢いるのです。
人生トータルでマイナスなので、老後にお金が足りなくなってしまいます。60歳を過ぎても働き続けたり、ギリギリまで生活費を節約したりする、余裕の無い暮らしになってしまうかもしれません。
そうならないためには、定年を迎える前にしっかりとお金の準備をしておく必要があります。
この記事では、平均の生涯所得と生涯支出を見比べ、現役時代に用意するべき金額を考えていきます。さらにお金を用意する方法も解説するので、最後まで読んでお役立ていただければ幸いです。
学歴別・平均の生涯所得
早速、学歴別に平均の生涯所得を見ていきましょう。
いかに、独立行政法人労働政策研究・研修機構が公表している2019年版のユースフル労働統計の調査内容を引用します。以下の表は、60歳まで正社員で働き、退職金を含めない場合の生涯賃金の平均です。統計では賃金という呼び方をしていますが、所得と同じようなものだと思っていただいて構いません。
学歴 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
中学卒 | 2億円 | 1億4000万円 |
高校卒 | 2億1000万円 | 1億5000万円 |
高専・短大卒 | 2億2000万円 | 1億8000万円 |
大学・大学院卒 | 2億7000万円 | 2億2000万円 |
参考:ユースフル労働統計 2019 労働統計加工指標集『生涯賃金など生涯に関する指標』
男性の生涯賃金は2億円から3億円程度、女性の生涯賃金は1億円から2億円程度であることが分かります。
ちなみに男女間の差についてですが、これは結婚や出産を機に女性が正社員を辞め、非正規やパートで働くといったライフスタイルの変化は関係がありません。男女ともに60歳まで正社員で働き続けた場合で比較しているためです。これらの格差は、管理職など給与が高いポジションに男性が多いことなどが影響していると考えられます。
生涯で使う支出はどれくらい?
生涯所得は男性が2億円から3億円程度、女性が1億円から2億円程度と分かったので、次は生涯で使う支出はどれぐらいなのか見ていきましょう。生涯所得の方が生涯支出よりも多ければ良いですが、少なかったら大問題ですよね。
具体的に支出を見ていくと、就職してから60歳までの2人以上の世帯の消費支出は、約2億円と言われています。また、60歳から85歳までの消費支出は6000万円程度とされています。合計すると、2億6000万円です。
これらに加えて、マイホームや子供の教育費、結婚費用や家具家電などの支出があります。マイホームが4000万円、子供1人あたりの教育費が1000万円、その他をまとめて1000万円と見積もると、消費支出と合わせて3億2000万円が生涯支出となります。子供が1人増えるごとに1000万円を足していきます。
3億2000万円と言う数字はあくまでも平均的な場合を想定した金額です。求める生活水準によって障害支出は大きく変動することはご理解ください。
しかし、一昔前のように男性が外で働き、女性が専業主婦として家庭を守るようなあり方は難しくなっていることが分かります。男性の生涯所得が2億円から3億円であるのに対し、生涯支出の平均は3億円以上だからです。
そこで問題となるのが、足りない分をどうやって稼ぐかです。お金を増やす方法を解説していくので、定年を迎える前に取り組み、準備していきましょう。
お金を増やす方法
お金を増やす方法は、大きく分けるとたった3種類しかありません。
- 収入を増やし
- 支出を減らし
- 投資でお金を増やす
これがお金を増やす3原則です。
この3つの方法をぐるぐると回せば、自然とお金は貯まっていきます。それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
昇給・転職・副業で収入を増やす
お金を増やす方法といえば、収入を増やすことが真っ先に思いつきます。今の職場で昇進すれば昇給できる場合、昇進を狙っていきましょう。昇進の条件に資格や語学力を求めている会社もあるので、どんな条件を満たせば昇進できるのか、人事の規則を確認しましょう。
昇進できなさそうな場合や、昇進してもあまり供給できずメリットがない場合などは、思い切って転職を考えるのも手です。今より条件の良い会社に転職できれば、生涯所得を増やすことができます。
昇給も転職もできなさそうな場合、副業にチャレンジするのがおすすめです。アルバイトのような時給が決まっている仕事でも良いですし、本業で身に付けたスキルを活かしてフリーランスとして働くのも良いでしょう。会社の規則で副業が禁止されている場合などはできませんが、そうでない場合は副業で収入を増やしましょう。
まとめると、収入を増やす手段は昇進、転職、副業の3つです。どれか1つでも良いので取り組み、生涯所得を増やしましょう。
節約してお金を貯める
節約をしても生涯所得は増えませんが、生涯支出を減らすことができます。さらに節約して浮いたお金を貯金することで、老後の備えにもなります。
節約する方法として効果が高いのは、固定費を見直すことです。固定費とは、家賃やスマホの使用料、生命保険料など、毎月ある程度決まった支出になるものです。これらの支出は金額が大きいので、少しでも節約できれば大きな効果があります。
例えば、スマホのプランを見直してみると、使っていないオプションがたくさんついていることがあります。携帯ショップの店員の言いなりで契約していると、不要なオプションにお金を支払いすぎることになってしまいます。今からでも遅くないので、プランを見直し、不要なオプションを外しましょう。
同じように、家賃や保険料も見直すことができます。これらはライフスタイルが変化するタイミングで見直すことをおすすめします。例えば、結婚したとき、子供が生まれたとき、子供が就職して独り立ちしたときなどです。ライフスタイルによって暮らしやすい家は変わりますし、必要な保険の補償も変わるからです。ぜひライフスタイルが変化するときに、一度見直しましょう。
まとめると、節約に取りかかるならまず固定費から、と考えてください。節約といえば電気代や水道代の節約を思い浮かべるかもしれませんが、これらの節約では1ヵ月で数円程度しか節約できません。そのため、一度に数千円から数万円も節約できる固定費の見直しから始めましょう。
投資でお金を増やす
お金を増やす手段は、収入アップだけではありません。投資をすることで、お金にお金を稼いでもらう状態が作れるので、お金を増やすことができます。労働を増やさなくてもできる資産形成なので、本業が忙しい方にもおすすめです。
投資にはさまざまな種類がありますが、ここでは不動産投資を例に投資を解説していきましょう。不動産投資とは、賃貸マンションやアパートを購入して貸し出し、入居者から家賃収入をもらう投資方法です。また、不動産を安く買って高く売ることで、差額を儲けることもできます。
株式やFXなどの投資も、大まかな仕組みは同じです。お金を出して投資価値のあるものを買い、その商品が生み出す収益を儲けとしてもらうのが、投資の仕組みです。
投資には必ず上手く行くという保証がないため、運用に失敗すれば投資した元本が減ってしまうこともあります。そのため物件選びや銘柄選びが重要ですが、過度なリスクを取らなければ大きな失敗をすることもありません。自分が働かなくても収入を得られるのが投資の魅力なので、老後の資産形成にぜひ役立てていただきたいです。
収入を増やし、支出を減らし、投資でお金を増やす
生涯所得と生涯支出はどれくらいなのかを中心に解説してきました。正社員で60歳まで働く場合、生涯所得は男性が2億円から3億円程度、女性が1億円から2億円程度です。一方、生涯支出は夫婦2人で3億2000万円程度となります。
60歳まで夫婦2人ともが正社員で働き続けるとは限らないので、生涯支出が生涯所得を上回ってしまう世帯も多いです。
老後にお金が足りなくなって困らないようにするためにも、収入を増やし、節約で支出を減らし、投資でお金を増やすことに取り組んでいきましょう。
なお、既に仕事と節約を頑張っている方でも、投資は未経験の方が多いです。最初は不動産選びなど何に投資したら良いのか分からないことだらけだと思います。投資セミナーに出席するなど、勉強しながら投資を進めていきましょう。