マンション投資などの不動産投資では、数千万〜数億円といった価格の物件を購入するところから始まります。これだけのお金をすぐに用意できる人はほとんどおらず、多くの人は「不動産投資ローン」を利用して始めるでしょう。
不動産投資ローンには、住宅ローンとは異なるメリットやデメリット、リスクがあります。不動産投資による資産運用を始める前に、ローンについての基礎知識を抑えておきましょう。
目次
不動産投資ローンのメリット
まずは不動産投資ローンの借入を行うメリットを3つ解説していきます。
- 資金が少なくても不動産投資ができる
- 住宅ローンより大きな金額を借りられる
- 家賃収入も返済原資になる
資金が少なくても不動産投資ができる
不動産投資をするには数千万〜数億円ものお金が必要ですが、自己資金で十分まかなえる余裕のある人は少ないでしょう。不動産投資ローンを組めば、まとまった金額の頭金で投資を始めることができます。
住宅ローンより大きな金額を借りられる
不動産投資ローンと住宅ローンの大きな違いは、借りられる金額です。住宅ローンの場合、年収の5倍から10倍程度の融資なら、比較的簡単に審査に通ります。ですが、不動産投資ローンの場合、年収の10倍から30倍でも借りることができるのです。
自分と家族が住むための家であれば数千万円程度なので、年収の5倍から10倍の住宅ローンで問題ありません。ですが、投資用の物件となると、部屋が複数あるマンションやアパートで始めるのが一般的。そうなると、数千万円では買えず、数億円といった金額になることも。不動産投資ローンはこのような物件を買って投資をしたい人のためのローンなので、とても大きな融資金額を借り入れることができるのです。
例えば、一般的なサラリーマンのモデルケースとして年収が400万円の場合を考えましょう。年収の10倍から30倍は4000万円から1億2000万円です。1億2000万円の融資を受けることができれば、マンションやアパートの購入も現実的になるのではないでしょうか。
家賃収入も返済原資になる
不動産投資は事業の側面が強いので、投資で得られた収益をローンの返済に充てるのが一般的です。すなわち、物件の入居者から支払われる家賃をローンの返済に充てる形になります。
したがって、家賃収入だけでローンの返済ができれば、自分の財布は全く痛まないこととなります。さらに、ローンを完済した後は利益のほとんどを自分のお金にすることができます。老後の年金の代わりとして不動産投資が人気なのも、安定的な収益を得られるためです。
不動産投資ローンのデメリット
次に、不動産投資ローンを組むことによるデメリットを紹介していきます。
- 住宅ローンより金利が高い
- 住宅ローンがあると融資額が減る
- フルローンは審査が厳しい
住宅ローンより金利が高い
住宅ローンの金利は0.5%~2.0%程度ですが、不動産投資ローンの金利は1.5%~4.5%程度となっています。住宅ローンと同じような金利で借りられる、と思っていると、契約時に金利を知って驚くことになってしまいます。金利が高い方が合計の返済金額が大きくなるので、高い金利はデメリットになります。
不動産投資ローンの金利が高い理由は、貸し倒れのリスクがあるためです。融資金額が大きいことに加え、入居者がつかず空室率が高くなると想定通りの返済計画が守られなくなる可能性があります。金融機関にとってはリスクの高い投資と判断されるため、金利が高く設定されるのです。
住宅ローンがあると融資額が減る
既に住宅ローンを借りており、現在返済している最中の人は、融資額が少なめになることが多いです。物件購入のために足りないお金は自己資金でまかなう必要があるので、融資額の減額は大きなデメリットです。
どれくらい減るのかというと、不動産投資ローンの融資額から、住宅ローンの残債を控除した金額、と考えておきましょう。
上述の例を使い、1億2000万円の不動産投資ローンを借りようとした場合を考えます。住宅ローンが3000万円残っている場合、1億2000万円から3000万円が控除され、9000万円の融資となります。
ちなみに、住宅ローンを完済した実績のある人はローンを借りやすくなると考えられます。
フルローンは審査が厳しい
物件購入費をすべてローンでまかなうことを、「フルローン」と言います。フルローンは必然的に融資額が大きくなるため、物件の収益性や本人の年収などの審査が厳しくなり、通りづらくなります。
金融機関は「投資が上手く行かず、家賃収入が途絶えたとしても、ローンの返済をしてくれる人か?」という点を重視します。そのため、フルローンで融資を受けるには本人の年収や勤務先の会社が安定している必要があり、厳しく審査されるのです。
投資用の物件を選ぶ段階からフルローンを前提にしていると、ローンの審査に落ちて物件選びからやり直さなければならない可能性が高くなります。最初からフルローンに頼るのではなく、自己資金から頭金や初期費用を捻出するなど、よく考えてから始めましょう。
不動産投資ローンのリスク
最後に、不動産投資ローンのリスクを解説していきましょう。
- ローンの審査に落ちる
- 返済期間が短い
- 住宅ローンと二重ローンになる
ローンの審査に落ちる
不動産投資ローンも審査に通らなければ借りることはできず、審査に落ちて借りられないリスクもあります。
不動産投資ローンの審査で重要視される条件は、物件の収益性や担保性、本人の属性です。特に、不動産投資は事業目的の側面が強いので、収益性と担保性は大切なポイントです。
もし、銀行などの金融機関による審査に落ちてしまったら、そもそも「物件の収益性や担保性が良くなく、失敗する可能性が高い」ということが考えられます。本人の年収などが平均的な水準の場合、物件に問題があると考えた方が良いでしょう。審査に落ちてしまったら、投資先の物件や立地、投資計画を見直し、投資の成功確率を上げてみましょう。
返済期間が短い
住宅ローンは35年が一般的ですが、不動産投資の場合は20年から35年です。物件によって幅はありますが、住宅ローンより短い傾向にあるため、早く返済しなければならないことに注意しましょう。
新築の物件なら35年ローンを組むことは可能ですが、中古の物件は返済期間が短く設定されることが多いのです。これは、物件の耐用年数が短くなっていることに起因します。築年数が経っている物件ほど、建物としての寿命が短いのはイメージできると思います。そのため、建物として機能する間にローンの支払いを済ませる必要があり、返済期間が短く設定されるのです。
住宅ローンと二重ローンになる
住宅ローンを借りている人が不動産投資ローンを借りると、二重ローンになってしまいます。これ自体は問題ありませんが、不動産投資に失敗するとローンで苦しむリスクがあります。
不動産投資ローンの返済原資は、主に物件から毎月得られる家賃収入です。もし投資が上手く行かず、空室が多くて期待したほどの家賃収入が得られなかった場合、家賃収入ではローンの返済をまかなえなくなってしまうかもしれません。
このような場合、ローンの借主の給与や貯金から不動産投資ローンの返済をする必要があります。住宅ローンを抱えている場合は、住宅ローンの返済と不動産投資ローンの返済を、自分の給与や貯金から捻出しなければなりません。
ローンの支払いに苦しむことになれば、生活にも影響が出てしまうでしょう。安易に大きな金額で不動産投資ローンを組むのはおすすめできません。
まとめ
不動産投資ローンを借りるメリットとデメリット、リスクについて解説してきました。数千万〜数億円といった物件の購入時にはローンが必須ですが、デメリットやリスクも理解した上でローンを活用しましょう。