空き家になった相続物件は賃貸にすべきか?売却すべきか?

実家を相続する人は多いです。しかし、両親と相続に関する話し合いをする人は少なく、空き家の活用方法を考えられていない人が増えています。その結果、空き家問題が深刻化しているのです

両親が住む実家が空き家になりそうだけど、自分の家はあるし、どうしよう
実家を相続することになりそうだけど、住む気がない場合どうすれば良いの?

実際に、空き家はどのように活用すべきなのでしょうか?
ここでは、相続した空き家をどうすべきなのかを分かりやすく解説します。

他人事ではない実家の相続問題

冒頭でも述べたとおり、実家の相続について両親や兄弟姉妹と話し合う人は少ないです。

しかし実家の相続問題は複雑に絡み合っていることが多く、問題解決には多大な労力と時間が必要になります。

どのような人でも実家を相続する可能性があり、事前に相続に対する知識は備えておいて損はありません。

まずは相続についての基礎知識を解説していきます。

相続人の順位

誰かが亡くなるとその人を被相続人といい、亡くなった人の財産が相続人に承継されます。

遺言書がある場合は内容通りに相続が開始されますが、ない場合は基本的に配偶者や子どもが相続することになります。

そして遺言書がない場合、以下のように法律で定められた相続人の順位に則って相続人が決定します。

    1. 第一位:子ども
    2. 第二位:両親等の直系尊属
    3. 第三位:兄弟姉妹

なお配偶者がいる場合はその人が必ず相続人となり、同じ順位に複数人いる場合は、全員が相続人となります。

また相続開始の際に、全員均一に財産が分与されるわけではなく、以下のように法律で割合が定められています。

配偶者+子ども 配偶者2分の1
子ども2分の1
配偶者はいるが子どもはいない 配偶者3分の2
親3分の1
配偶者はいるが子どもも親もいない 配偶者4分の3
兄弟姉妹4分の1

参考:三井住友銀行『誰がどれだけ相続するか』

相続財産の具体例

相続財産というと現金や株式などの有価証券、不動産などを思い浮かべる方は多いですが、実は借金などの負債も相続財産に含まれます。

相続人は資産となる財産を引き継ぐと、同時に負債も引き継ぐことになります。

以下、相続財産の具体例です。

  • 現金・有価証券
  • 不動産(借地・借家権を含む)
  • 自動車
  • 家財
  • 骨董品・貴金属
  • ゴルフ会員権
  • 著作権

上記に挙げたものは全て資産となる財産ですが、以下のような負債も相続財産となります。

  • 借金・買掛金
  • 未払いの税金
  • 未払いの家賃・地代等

相続財産とは、資産または負債全て含めて経済的な価値があるもの全てが対象となると覚えておきましょう。

相続した実家の管理者責任とは

相続で実家を引き継ぐことになれば、たとえ空き家であっても管理者責任を負うことになります。

そもそも相続で実家を引き継ぐと、相続人は実家の所有者となるわけです。所有者となれば建物が壊れて誰かケガさせないようにするなど、管理責任が生じます。

民法の717条には「工作物責任」という賠償責任があり、土地や建物の保存に瑕疵があることによって他人に損害を与えた場合は、その所有者が被害者に対して損害を賠償する責任を負うとしています。

つまり、誰も住んでいない空き家の状態で相続によって引き継ぎ、建物の老朽化によって誰かをケガなど損害を与えてしまうと、相続人が賠償責任を負う必要があるということです。

空き家を相続する場合は、しっかりと管理していく必要があるということになります。

広がる相続物件の空き家問題

空き家のリスクを説明するイラスト
日本では、空き家問題が深刻化していますが、実家を相続した場合はどうすれば良いのでしょうか?まずは、広がる空き家問題について解説します。

長期空き家予備軍の物件は増加の一途

少子高齢化に伴い、長期空き家予備軍の物件が増えています。総務省が5年に1回発表する「平成30年住宅・土地統計調査」によると、2018年10月時点の空き家は849万戸、総住宅に占める空き家率は13.6%です。

空き家で被害を受けているのは、近隣住民の方です。長期空き家予備軍の建物は、定期的なメンテナンスがされている場合は少なく、台風被害を受けてトタンが飛んできたり、エアコンの室外機が落ちてきそうになるなど、近隣住民による市区町村の相談窓口も混雑してきました。

空き家対策の特別措置法が完成

空き家問題を背景に、政府は2014年11月に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」を成立させました。この措置法によって、放置されている空き家の所有者には、高い固定資産税が請求されるようになり、空き家の活用方法を積極的に考えなければいけない環境となりました。

また、行政の命令に従わない場合は、50万円以下の罰則が科せられます。そのため、空き家を相続した場合は、活用方法を考えていかなければいけません。

空き家所有者が抱える悩み

空き家の所有者になると様々な悩み事がでてきます。

たとえば以下のような悩みが挙げられます。

  • 自宅から遠く管理するのが大変
  • 固定資産税など費用がかかる
  • 管理に時間や手間がかかる

このうち最も多い悩みが「自宅から遠く管理するのが大変」です。

たとえば自分は東京在住で、実家(空き家)が首都圏外にある場合、状況を逐一確認できないなどの悩みがあるのです。

また不動産を所有しているだけで、固定資産税などの一定の費用がかかることも懸念として挙げられます。

これらをまとめると、空き家はなるべく早めに手放したいと思う方が多いということです。

相続した空き家を放置しておくとどうなる?

それでは相続した空き家を放置することで、どのようなことが起こりうるのでしょうか?

考えられるリスクとして、以下のようなものが挙げられます。

    1. 放火・火災
    2. 空き巣・不法侵入
    3. 「特定空き家」に認定されると税金が高くなる

以下で詳しく見ていきます。

放火・火災のリスク

人が住んでいないことが周りに知られてしまうと、放火の標的となってしまう可能性があります。

また手入れされていない庭の草木が生い茂っていると、自然発火により火災や延焼の原因となります。

空き巣・不法侵入のリスク

空き家であっても、建物内に家財などの資産となるものがあれば、空き巣に入られるリスクがあります。

また人が住んでおらず、管理もされていないことが周りに知られてしまうと、不審者のたまり場となることも考えられます。

このような事態になると、周辺地域の治安悪化につながるため、自治体などから指摘を受ける可能性もあります。

「特定空き家」認定されると税金が高くなる

実はしっかり管理されていない空き家となると、「特定空き家」に認定され固定資産税の軽減措置から除外される可能性があります。

固定資産税の軽減措置から除外されてしまうと、その年の納税額が跳ね上がり所有者の負担が重くなります。

また管理状態が悪い空き家であれば、物件の資産価値も下がってしまうため売却時に希望額を下回る可能性もあるでしょう。

相続した空き家の対処方法

相続した空き家の最適な活用方法は、所有者の状況によって異なります。空き家で賃貸事業を営めば、不労所得を得ることもできます。老後100年時代とも言われているので、不動産投資を始めるサラリーマンも増えてきました。

しかし、不動産投資は、手元資金に余裕がない場合はおすすめできません。空き家で賃貸事業を営む場合は、管理費や修繕費、固定資産税など想像以上にお金がかかります。

また、空き家問題を背景に売却時の譲渡所得控除など特例も適用できるようになりました。そのため、売却時の税金負担が軽減されたので、手元資金に余裕がない場合は売却も1つの手段です。

それでは以下で相続した空き家の対処方法を詳しく見ていきましょう。

賃貸物件として誰かに貸し出す

最も合理的な空き家の対処方法は、誰かに貸し出すことです。

空き家を賃貸にすることで、思い入れのある家を手放さなくて済み、空き家管理問題から解放されます。

しかし空き家を賃貸にすることでお金もかかります。

たとえば、長い間空き家の状態で管理状態が悪ければ、最低限のリフォームが必要になります。

リフォームの規模によりますが、大がかりなものとなれば数千万円の費用がかかるでしょう。

また物件の貸主となることで、居住者の安全を安心を守るためにも電気ガス水道等のトラブルに対処する必要も出てきます。

とりあえずは所有して管理する

相続物件が自宅から近くにあるのであれば、月に何度か出向き掃除や換気をして管理することができます。しかし、遠くにある場合はそうもいきません。

最近の空き家問題を受けて、空き家管理を請け負ってくれる業者があります。

中には1回100円で対応してもらえる業者もあるため、将来的に自分が住むまたは誰かに貸し出すのであれば、空き家管理サービスを利用してみるのも選択肢の1つとしておくと良いです。

売却するなどして手放す

こちらは最終手段になりますが、空き家を売却するという手段も選択肢に入れておきましょう。

「自分では管理できない」「人に貸せる状態ではない」「固定資産税などの税金の負担も避けたい」と思うのであれば早めに売却を検討しましょう。

物件の状態により売却額は変わりますが、売却できるのであれば早くするに越したことはありません。

相続した空き家で賃貸を始める場合の判断基準

実家の状態を専門家に診断してもらう
両親から相続した空き家で賃貸事業を始めれば、不労所得が得られます。しかし、賃貸事業を営むためには、想像以上に資金が必要です。また、賃貸需要があるのかなど市場分析を徹底して行わなければ、賃貸事業は失敗に終わってしまいます。

それでも、不労所得を得るために賃貸事業を営みたい場合は、どのような判断基準で検討すれば良いのでしょうか?ここでは、相続した空き家で賃貸を始める場合の判断基準をご紹介します。

賃貸需要があるか

不動産投資の成否を決めるカギは、賃貸需要です。相続した空き家の所在地に賃貸需要がなければ、入居者募集に苦戦して賃貸事業は撤退せざる得なくなります。そのため、賃貸需要があるかを良く確認してください。

賃貸需要の高いエリアとして、駅から近くて複数路線が利用できる場所が人気です。また、快速急行の電車が停車するエリアも人気があります。それだけではなく、商業施設が充実していたり、治安が良いエリアも賃貸需要があります。

建物の構造部分に損傷はないか

旧耐震性の住宅(1981年5月31日以前の建物)でなければ、震災時も安心と安易な考えを持つのは控えてください。建物のメンテナンスを行っていない場合は、構造部分が損傷しているケースも少なくありません。

雨漏り・傾きなどの建物の躯体部分が損傷していて修繕が必要な場合は、高額な修繕費がかかるため、賃貸事業は現実的なものではなくなります。そのため、賃貸事業を始める前に、ホームインスペクションなど専門家に建物の状態を確認してもらいましょう。

修繕費を捻出できるか

相続した空き家をそのままの状態で貸し出せると良いですが、大半はリフォームが必要になります。そのため、空き家を賃貸経営で活用する場合は、どれぐらいの修繕費が必要かを算出して捻出できるかを考えてみてください。修繕費が大きな負担となる場合は、賃貸経営をするのは控えましょう。

事故物件に該当するか

近頃は、介護施設に入所する際に実家を相続する人も増えてきました。このような場合は問題ありませんが、部屋の中で孤独死を迎えたなどの場合は事故物件扱いになります。

不動産賃貸事業を営む場合は、入居者に事故物件であることを告知しなければいけないため、入居者募集が難しくなってしまいます。そのため、事故物件に該当する場合は、賃貸経営は控えましょう。

管理人がいるか

賃貸経営は、不動産所有していれば、誰でも簡単に始められて成功するものではありません。賃貸経営は定期的な管理や入居者との関係構築が求められます。

不動産管理会社にお任せするのであれば、手間をかけずに事業を営むことができますが、管理委託費を支払わなければいけません。そのため、管理人が用意できるかどうかも視野に入れて考えてみてください。

いくらで貸せるか近くの専門家に聞く

上記の項目が確認できれば、空き家の所在地近くの不動産業者などの専門家に、いくらで貸せるのか確認してみましょう。

ここで注意点として、自分が住んでいる近くの不動産業者に聞かないことです。

不動産の賃貸は、その土地ならではの特徴がいくつかあります。

そのため自分が住んでいる地域の不動産業者に、遠く離れた実家の空き家を貸し出すことを聞いても、明確な回答が返ってこない可能性があります。

その土地のプロでもある、空き家の近くの不動産業者にしっかり確認してみましょう。

賃貸した場合と売却した場合のシミュレーション

それではここで、空き家を賃貸した場合と売却した場合に分けてシミュレーションしてみましょう。

まず賃貸にした場合のシミュレーションから行います。

ここでは日本政策投資銀行グループの株式会社価値総合研究所のデータを用いてシミュレーションを行います。

前提条件は以下のとおりです。

  • 月額賃料:7万円(年間84万円)
  • 賃貸前の修繕費:300万円
  • 賃貸運営上の管理費:88万円
  • 貸出期間:8年間
  •  

    上記の条件の累計収支は以下のようになります。

  • 8年間の累計収入:672万円
  • 8年間の累計支出:516万円
  •  

    なお5年目に追加修繕費として15万円を計上しています。

    こちらのシミュレーションでは3年目までは赤字が続きますが、4年目からはプラスに転じその後はプラス幅が広がっていきます。

    8年間賃貸にした場合の累計収支は156万円のプラスとなります。

    一方で物件を売却した場合のシミュレーションも行います。

    こちらは三菱UFJ不動産販売のシミュレーションツールを利用していきます。

    前提条件は以下のとおりです。

  • 売却価格:1000万円
  • 取得費:5%
  • 諸経費(仲介手数料除く):100万円
  • 印紙代:1万円
  • 非居住から5年超
  •  

    こちらの条件で算出した手取り金額は705.5万円です。

    不動産を売却するには、売却金額から仲介手数料や諸経費、印紙代、譲渡税がかかります。

    条件によって変わりますが、売却価格の6~7割が手元に残ると理解しておくといいでしょう。

    これらを踏まえると仮に空き家を賃貸する場合、17~18年以上借主がいれば売却するよりも得になる可能性があります。

    もちろんどちらも細かい諸条件は除いていますが、管理状態がよければ売却するよりも賃貸にする方が、一定期間利益が得られる可能性があるといえます。

    相続した物件の相談窓口(空き家投資業者)の選び方

    空き家投資の専門家
    相続した空き家で賃貸事業を営めるかどうかが気になる方は、相談窓口を利用しましょう。空き家投資業者に相談をすれば、計画通りに不労所得が得られるか、負担がかからずに賃貸経営が行えるかのアドバイスがもらえます。

    また、ワンストップで賃貸経営をお任せできるので大変便利です。しかし、空き家投資業者の相談先は慎重に選びましょう。ここでは、空き家投資業者の選び方をご紹介します。

    不動産会社が運営していること

    空き家投資業者の中には、コンサルティング会社が運営する相談窓口と不動産会社が運営する相談窓口があります。

    コンサルティング会社は提案・助言の手数料が売上となっています。不動産会社と提携しているため、ワンストップでお任せすることができますが、トータルコストは高くなるので注意してください。

    その一方で、不動産会社が運営する相談窓口はコンサルティング料金がかかりません。不動産仲介やリフォーム工事で売上を計上しているため、コンサルティング手数料は必要ないのです。そのため、賃貸経営のコストを安く抑えたい方は、不動産会社が運営する相談窓口を利用しましょう。

    実績を豊富に持っていること

    空き家投資は、建物構造を確認したり、修繕費など収支を計画したりしなければいけません。専門的な知識が必要になるため、実績を豊富に持っている空き家投資業者に相談するようにしましょう。

    過去に、高い利回りを実現しており、それらの情報を公開してくれる業者であれば、安心して賃貸経営をお任せすることができるはずです。

    補足:担当者自身が空き家投資をしていることもある

    空き家業者の営業担当者自身が、空き家投資をしていることもあります。そのような担当者であれば、これから空き家投資を始める方に対して、親身に相談に乗ってくれるでしょう。そのため、賃貸経営の相談をする際に、担当者の空き家経験を聞いてみてください。

    資金や建物の状態に合わせて活用方法を決めよう

    今回は、相続した空き家の活用方法についてご紹介しました。
    賃貸と売却のどちらが良いかは一概に答えられませんが、放置した状態だと固定資産税を支払わなければいけません。また、行政命令に反した場合は、罰金の対象になります。

    そのため、空き家所有者は、自分に合った活用方法を検討してみてください。

    この記事では、空き家投資業者の選び方についても触れましたが、どこに依頼しようか悩んだ場合は、下記の空き家投資業者がおすすめです。ぜひ、空き家投資を考えている方は、チェックしてみてください。

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